鹿島美術研究 年報第11号別冊(1994)
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Vヽ゜りと修復チームが『聖ペテロの傑刑』と推測している窓下の壁画断片,そして正面上段左右の『聖ペテロの説教』と『洗礼を施す聖ペテロ』のイントーナコの重なり具合から明らかになった順序,すなわち『説教』を描いたマゾリーノがその左隣の帯装飾を描き,『洗礼』を描いたマザッチォがその右隣の帯装飾を描き,それから窓下の帯装飾が描かれ,マザッチォの『財産分与とアナニアの死』の後にいわゆる『聖ペテロの傑刑』そして『影で癒す聖ペテロ』へと進んだこととこの仮説は矛盾するものではな結語マゾリーノ,マザッチォの絵画作法とを比較し,それから導かれる礼拝堂壁画の制作過程に関する問題についての私の若干の見解を述べてみた。本調査研究で扱った問題は,まだ出発段階にあり,これからの調査,分析しなければならない課題が当然のことながら山積している。従って,本論で提示した仮説は,将来修正される可能性もある。先学の弛まぬ努力があればこそ別な試みもできる道理で,今後引き続きこの問題の考察を続けて行くつもりである。--62 -

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