資料6「この本はバフマンの子フマーニーのためにつくられたという説があります。また,この本について,ただ今,申し述べたのとは別のお話も伝えられております。ムハンマド・ブヌ・イスハークが申します。アッラーの思召しに従って,本当のことを申すつもりですが,夜をこめて物語を続けさせた最初のひとはアル・イスカンダル(アレクサンドロス大王)でございました。この王のもとには笑わせたり,物語をしたりする一群の人々がついておりました。大王はそのようなものを快楽のため必要としたのではなくて,ただ夜も眠らずにいて,身を護ろうとしたがためでした。後世の帝王たちも[ハザール・アフサーナ(千物語)』を同様の目的のために使用いたしました。この本は一千夜にわかれ,二百たらずの物語が収められてありますが,それはいく晩もかかって話しおわった物語もかなり多くあるためなのです。わたくしは,この書の完本をなんども見かけましたが,本当のところを申せば,これは荒唐無稽なお話を集めた,(あまり値打ちのない)つまらぬ本でございます。」前嶋信次「アラビアンナイトの世界」p.39-40より-76 -
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