図1:「ヘディステの墓碑」250-200B. C. Volos 1. ヰL慣習(特に,アッティカ浮彫墓碑と白地レキトスを含む彩色陶器を通して理解され⑨ 紀元前4,3世紀を中心としたギリシア葬礼絵画の研究:「ヘディステの墓碑」研究者:ハーバード大学大学院中村るいギリシア,ヴォロス美術館収蔵の「ヘディステの墓碑」[収蔵番号1](紀元前3世紀)は,テッサリア地方デメトリアス・パガサイ遺跡出土のヘレニズム時代の一連の彩色墓碑のうちで,もっとも複雑な構図をもち,さらに絵画研究者の論争の的となってきた[図1] (Arvanitopoulos 1928)。この墓碑は,換言すれば,ヘレニズム時代の絵画空間に対する我々の認識への,そしてギリシア葬礼芸術に対する我々の理解への再検討を迫るものといえよう。この墓碑の図像は,墓誌銘にも記されているとおり,産褥の床で息をひきとった若妻の図であり,その図像と奥行きのある空間表現について,統一された見解は出されていない。一般に墓碑には,根本的に相反する二つの面,即ち,1)肉親の死を悼む私的感情の表出,2)公的空間に設置される公的標示物としての側面が含まれる。この二面を念頭に,「ヘディステの墓碑」はギリシア葬礼芸術の伝統においてどう位置付けられるべきかを考察したい。本稿は,四部よりなる。I.「ヘディステの墓碑」に描写された空間構成を,西洋絵国史におけるヘレニズム絵画のなした貢献という観点から考察する。II.ギリシア葬(Source : Arvanitopoulos、1928,Color Plate II) -77 -
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