⑬ フランス革命期の寓意画研究者:郡山女子大学短期大学部専任講師齋藤美保子平成6年7月29日から8月19日まで約3週間の調査旅行を行った。訪れたのはパリ,リヨン,アヴィニョン,アルル,マルセイユ,ヴェルサイユ,ソワソン,ロンドン,以上8都市の大小の美術館,博物館である。調査で得た大きな成果が4つある。レアテュは革命期にアルルに住み,マルセイユ周辺で活動していた画家である。8年前「自由」という文字が題名に入った革命期の作品の写真を,パリの写真商ジロドンのリストをたよりに集めていて,私はこの画家の《世界を経巡る自由》という作品を知った。その後,フランス革命二百周年を期して続々と出版された図像資料でこの作品が掲載されているのを見たが,制作年がまちまちだったり,作者の紹介がなかったりで,細かいことはよくわからなかった。今回の調査でアルルを訪れたのは,この画家のアトリエを保存したレアテュ美術館を訪ねるためである。事前に館長との手紙のやりとりで,レアテュ研究がようやく最近始められジーモン夫人の博士論文『フランス革命の画家ジャック・レアテュ1760■1833』(KatrinSimons "Jacques Reattu 同館でこの論文を入手したのはもちろんである。美術館での私自身の印象を交えながら,レアテュの作品と生涯を紹介したい。レアテュ美術館については,フランス革命史を研究している立川孝ー氏が『フランス革命と祭り』(筑摩書房1988年)の第8章プロヴァンス回想の中で触れておられるが,日本はもとよりフランスでも,レアテュのことを知る人は殆どない。フランス国鉄のアルル駅に降り立ち,ローヌ川に沿って土手の道を南下して行くと,川が大きく蛇行したあたりで左手に15世紀に建てられたマルタ騎士団の修道院だったという古くて厳めしい建物が迫ってくる。川とは反対の路地に面した正面入り口に回る。大革命で修道院が廃止されたためレアテュがアトリエとし,晩年には美術館の構想を抱いてここに自分の作品を回収したという。彼の死後アルル市が引継ぎ,1868年から美術館となっている。レアテュの作品がまとまって見られるのは勿論,ゴッホやピカソのような近代の絵画と最近の写真のコレクションが充実している。1 革命期南仏の画家レアテュの作品,及びレアテュ研究の現状1760■1833 Peintre de la Revolution franc;aise" 1985)が出版されたことを知った。-148-
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