鹿島美術研究 年報第12号別冊(1995)
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⑯ 初期ネーデルラント絵画における結婚の図像ーメムリンクのく聖カタリーナの神秘の結婚〉一一研究者:近畿大学文芸学部講師蛯川順子1.序ブルッヘの聖ヨハネ病院にある<聖ヨハネ祭壇画〉[図1]は,銘の記述や同病院付属教会の後陣拡張の記録などから判断して,教会の主祭壇のために,1473年から1474年にかけてハンス・メムリンク(ca.1430-1494)に注文が出され,1479年に完成または設置されたと考えられている。しかしながら,中央画に描かれた,幼児キリストから指輪を授かる聖カタリーナの姿が極めて突出した印象を与えるために,この祭壇画はまた<聖カタリーナの神秘の結婚〉とも呼びならわされてきている。ここでは,同病院の守護聖人,聖ヨハネヘの寄進を示す,様々な図像学的特徴があることを概観した上で,さらにく聖カタリーナの神秘の結婚〉のモチーフに着目し,メムリンクの創意がこの図像の展開に与えた意義を考察したいと考える。図1ハンス・メムリンク<聖ヨハネ祭壇画〉1479年中央画173.6X173.7cm(枠を含まず)左翼176X78. 9cm(枠を含まず)右翼175. 9X78. 9cm(枠を含まず)メムリンク美術館(聖ヨハネ病院),ブルッヘ-170-

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