鹿島美術研究 年報第12号別冊(1995)
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図3ジョン・ハートフィールド《無名の同志に》1936ノ図2アンゼルム・キーファー《無名の画家に》1980異化の芸術ダダとの接点をここに見てみよう。ハートフィールドの《無名の同志に》[図3]は岩壁に大きく刻み込まれたこの墓碑名の横に旗をしっかり握り締めたプロレタリアートの腕がモンタージュされている。したがって両作品にはそれぞれ,退廃芸術の烙印を押され,追放された画家たちへの哀悼,反ファシストの運動家への哀悼が,上述したミュッケの言う言語的な芸術として,込められている。キーファーのイロニーはまた,ハートフィールド同様ユーモアを重視している。写真作品にその傾向が強く,たとえばナチスのイギリス上陸作戦を椰楡した《あしか作戦》は湯舟におもちゃの船と氷を浮かばせた光景を撮影したものであり,またカントの実践理性批判の道徳律をテーマにした《星のきらめく天》[図4]は,ガウンをまとった作者自身の写真が素材となる。図4アンゼルム・キーファー《星のきらめく天》1980-187-r

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