⑲ スペインにおける浮世絵:蒐集と蒐集家達B)バルセロナおよびカタルーニャのコレクションBl)美術館収蔵品研究者:慶応大学文学部講師A)ラ・カイシャ財団,アングラーダ・カマラサのコレクション。(パルマ・デ・マジョルカ市,プコルト・ポジェンサ)。画家ヘルマン・アングラーダ・カマラサ(HermenAnglada-Camarasa, 1872-1959) のコレクションがいつ成立したか定かではない。娘のベアトリス・アングラーダ女史の語るところでは,1904-1915年の間にアングラーダが二度目の滞在をしていたパリで集められたものである。この頃,貴婦人の肖像画家として高い評価を受けており,経済的に豊かであった。アングラーダが今世紀初めから使っていた青の色彩はコレクションの時期とも重なるものとして日本の版画の影響ではないかと指摘する学者もいる。現在は,コレクションは氏の子孫が所有する110の版画並びに8冊の書籍と,建築家ジュイス・ドメネク・モンタネル(LluisDomenech Montaner)の建てた近代的な建鵠であるかつてのグランド・ホテル(1902-1912年)にあるラ・カイシャ財団のコレクションの一部を成す44の版画に分割されている。アングラーダは,極東の芸術に強<魅かれたようで,パリで入手した版画の他,中国,フィリピン,日本のさまさ‘まな作品も所有している。このコレクションは作品の質及び豊国,国貞,二代目国貞,国周,芳幾,国芳,北英などの多くの作家を含む点でバリエーションに富み,興味深いものであると言える。スペインの中で最も日本の芸術のインパクトが強かったのはカタルーニャ地方であり,芸術家だけではなく中産階級にも見られた現象である。この地方で私が見たコレクションのいくつかは,地方の豊かな中産階級の所有で,その子孫が保存しているも(Fundaci6 La Caixa, Colecci6n Anglada Camarasa, Palma de Mallorca, Puerto Pollen~a). (Colecciones en Catalunya) セルヒオ・ナバロ・ポロ(SergioNavarro-Polo) -201-
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