鹿島美術研究 年報第12号別冊(1995)
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1842-1901)の所有していたコレクションから成る。Catalunya)のものである。残念ながらここには複製版画も多いが,カタルーニャのモの影響が表れている。今日まで残っている浮世絵のコレクションは多くはない。バルセロナで最も保存のよいコレクションはバルセロナ国立史図書館(BibliotecaGeneral d'Historia de l'Art) のものである。この図書館の文書によれば,124の浮世絵版画を纏めた2冊の浮世絵版画貼込帖は,1888年の万博で公式に入手したものである。ここのコレクションは他にメストレス(18冊),リケル(16冊),1冊のホセ・ルイス・ペリセル(JoseLuis Pellicer, 次に数の多いコレクションはカタルーニャ美術館(MuseuNacional d'Art de デルニスモ芸術家のコレクションであったものが殆どであることで興味深い。メストレスのコレクションであったもの,またリケルやスミスのもの,1916年に売られたペリジョン(Perillon)コレクションがある。アペル・レス・メストレス(Apel-lesMestres, 1854-1936)は几帳面にも本に購入年と場所を記載しており,1890年代にパリ滞在中に購入したものであることが分かる。又,家も東洋の美術品や浮世絵,武具その他の異国のもので飾っていた。アレハンドレ・デ・レケル(Alexandrede Riquer, 1856-1920)は,ロンドンでモリスと交流を持ちカタルーニャにラファエロ前派の絵画の輸入を行っており,1878年に「日本風風景画」を何枚か描き,くしくも“クリサンテスメス”(菊)と銘打った詩集を菊の図柄で装飾している。フレデリック・マレス美術館(MuseuFrederic Mares)には幕末と明治の浮世絵の小規模のコレクションがある。すべてちりめん絵で,彫刻家フレデリック・マレス・デウロボル(FredericMares, 1893-1993)の父親が収集を始めたものであるが,1946年に市の美術館設立を機にマレスが寄贈した。フィゲラに代々続く家庭であり,かなりのものは,バルセロナで入手したのである。最近になって,彫刻家かアトリエにしまってあった作品が見つかり,その中で日本風モチーフのある1888年の万博の広告や商業広告などが目立っている。コレクションは他に100冊ほどの書籍であり,その印からいくつかのバルセロナの本屋で手に入れたものと思われる。作家であり画家のサンティアゴ・ルシノル(SantiagoRusifiol, 1861-1931)は,北斎,広重,房種の6枚の浮世絵を持っていたが現在は1枚紛失しており,残りは他-203-

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