の本を所蔵している。殆どが明治時代の歌川国貞や国芳,広貞の作品である。家はパリを芸術の前衛を学ぶ中心地と考えておりそこで日本の芸術と接触したのである。残念ながらこれらの芸術家の日本美術コレクションは今日まで残ってはいないが,画家アドルフォ・ギアルド(AdolfoGuiard, 1860-1916)と彫刻家で宝飾家のフランシスコ・ドゥリオ(FranciscoDurrio, 1867 -1940)は浮世絵版画のコレクションを一時的に持っていたようである。同じくフランシスコ・イトゥリノ(FranciscoIturrino, 日本の芸術の影響はバスク地方の絵画に比較的強く出ており,特にギアルドの絵によく出ている。ビルバオ美術館(Museode Bellas Artes de Bilbao)には現在214の極東の芸術作品が収められており,その中に49の版画と7冊の本が含まれている。これは直接の遺産相続人も家族も亡くなり,自分の相続人が亡くなったあとはそのコレクションは美術館に贈与するよう遺言を残していたホセ・パラシオ氏(JosePalacio)の遺産相続人から1953年寄贈されたものである。彼は,芸術の世界とは無縁の人物であり,単に趣味としてこのようなコレクションをしていたようである。何冊かの小冊子を書き残しているがこれも同美術館に残されている。この中で入手する作品の印象を書き残し又簡単な言葉で自分用に美術史を語っている。幾つかの作品の入手経緯を語っており,殆どがパリとロンドンで買ったものである。他の美術館を訪れた際のこと並びに自分のコレクションと似たものを見つけたときはその作品についてコメントを残しているのは興味深い。このコレクションについてローレンス・スミス教授が十年前に公表してはいないが調査をしている。プラド美術館別館とほぼ同数の作品があるのみならず,政信,政美,春章,豊国,二代目豊国などの浮世絵初期の立派な作品があることでも類似性がある。このビルバオのコレクションには,上方絵の絵師の作品や北英,岳亭,北景などの作品ほか興味深い作品がいくつかあり,このコレクションの価値を高めている。D)バスク地方ビルバオのコレクション(Coleccionesen Bilbao, Pais V asco) 19世紀この地方の芸術の中心地はビルバオで,カタルーニャ地方同様バスクの芸術1864-1934)も持っていたようで彼の絵には浮世絵版画が出てくる。いずれの場合も-207-
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