鹿島美術研究 年報第12号別冊(1995)
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明治期の美術展覧会の網羅的な出品目録が公刊された(注2)。明治期の美術団体の総合的な研究が行われる土壌が整備されてきつつあるといえるだろう。2 研究の課題,方法,成果以上のような研究史の現状をふまえ,本研究では,次のような三つの主要課題をかかげた。3)白馬会の歴史的意義の考察以下,この順にそって簡単にではあるがその方法,成果の一部,今後に残された課題などを報告してゆく。まずは,白馬会の活動の要となる展覧会に関する基礎資料の収集とデータの整理を行った。白馬会の展覧会は明治29年に第1回展を開催して以後,毎年1回を原則として,明治43年の第13回展まで開催された。ただし開催が中止された年もある。それら展覧会が開かれた会期の特定につとめ,各回の展覧会の最も基礎資料となる出品目録と画集の発行の有無およびその所在を調査した。第7回展から第9回展までの展覧会出品目録は,当時の新聞紙上の記事によって,展覧会開催時には配布もしくは会場に貼り出されていたことが判明したが,現在までにその所在を確認できていない。今後の発見を期したい。次に,収集した資料にもとづき,全13回の出品目録をデータベース化し,それぞれの出品作にたいして,図版掲載や批評・記事掲載の書名,雑誌名(号数),新聞紙名(日付),現存作品の場合の所蔵等のデータをあわせて入力した。とくに展覧会出品作品と現存作品との同定の作業には,画集掲載の図版はもちろんであるが,新聞紙上に掲載された挿図や批評記事が予想以上に多くの情報を提供してくれた。こうした作業により,現在までに,白馬会展に出品されたことが確実な,もしくはその可能性がきわめて高い現存作品約300点を特定した。ただし,このうち半数の約150点が東京藝術大学の所蔵品である。同校の前身である東京美術学校による白馬会展出品作の買入は第111)白馬会に関する基礎資料の収集整理2)白馬会に関する画家と作品の研究1)白馬会に関する基礎資料の収集整理全13回の展覧会の記録をまとめたのが〔資料1〕である。各種の資料によって実際に-255-

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