花鏡,六花鏡などの鏡形が唐時代になって初めて出現した理由の一つとして,対葉文によって形作られた逆ハート形を主要要素とする団華文の盛行があげられるかも知れない。(検討3)五銀鏡(図6)'フ銀鏡,大銀鏡(図7)'白稜鏡(図8)'白花鏡(図9)を鉦から外縁へと順次詳細に検討した。右ないし左に旋回する唐草文は,勝部氏の前掲論文の葡萄唐草文の描き起こし図を参照する限り,海獣葡萄鏡に見いだすことは出来ない。一方,八長杯,六銀杯,鍍銀杯,西安市韓森塞十街出土「蔓草花鳥文八稜銀杯」,そして蔓が横に展開する唐草文の表されたものとして西安南郊何家村出土「蔓草鴛喬鶉鵡文銀杯」などの銀器には類例がある。しかし,蔓の先に表された文様要素には幾分相違がある。この5鏡では,石櫂果の生育過程を示すとみなされる表現が,3 段階のもの(五銀鏡,フ銀鏡),2段階のもの(白稜鏡,白花鏡),1段階のみのもの(大銀鏡)と言ったように,変化に富んでおり,銀貼鏡内における独自の文様展開をフ金鏡(図4)「宝相華文璃」(図5)-284-
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