鹿島美術研究 年報第12号別冊(1995)
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3]。この人魚はロンバルディア地方やトスカーナ地方の他のロマネスク彫刻装飾に一(右円柱列の柱頭ーアプシスに近い部分より)半円柱の持送り一渦巻の内側を通る円冠上に卵形モティーフが施されている。葉状突起の間に,植物の蔓と共に足の長い盃の図が刻まれている[図2]。第一,第二,第三円柱の柱頭一基本パターンのヴァリエーションで,円冠や葉状突起に模様が施されたものもある。第三のものは渦巻間の突起が一部人物の頭部になっている。第四円柱ー四隅にアカンサスの作る渦巻があり,四面の中央に人魚の姿がある[図般に見られるような両の尾を開きその端を両手で掲げ持つというのとは異なり,両手を挙げて髪の毛に触れているように見える。下半身の鱗を模して,石の表面に軽〈ピッキエッタトウーラ斑点を施す技法が使われている。尾の先端部がかすかに二つに割れている暗示が見られる。水を表すジグザグ模様と共に,石エの独創性が見られる表現になっている。第五ー四隅の渦巻の下に剃髪を施した人物がおり,両手を挙げて渦巻を支えるポーズを取っている[図4]。その間により大きい人物が置かれているが,四人それぞれの服装は膝までのものから足首までと様々な長さで,高価な錦の模様を表そうという試みに見える線刻模様もそれぞれ異なっている。しかし皆司教杖を持ち帽子(司教冠)をかぶっている。ロメーナにもほぼ同様のテラモンがあるが,その間には天使が描かれ,アバクス部分には松の実,あるいは葡萄の房のような実をつけた蔓植物が描かれている[図5]。図2サンタ・マリア・アッスンタ聖堂右持送り-336-

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