③ 日中共同による「新種トルファン・アスターナ古墳出土の染織品(4-8世紀)の研究」研究者:古代オリエント博物館研究員横張和子別紙に記載された調査研究の目的のために,平成6年9月19日から同10月3日まで,研究者横張と共同研究者吉川は中国・烏魯木斉市の新彊自治区博物館に赴いた。佐藤教授はカナダにおける学会出席のためにこれに参加しなかった。今回の訪問は,この後に期待される継続的な共同研究のために,相互に面識を得ることと中国古代文化財に対する表敬の意味があった。非常に脆い文化財である古代染織品,特にそれが第一級文物であることを考えると,最初の訪問から直ちに本格的調査に入れるとはとても考えられることではなかった。わが国正倉院宝蔵の染織品に日本人研究者ですら容易に近づくことが出来ないのとまったく同じ認識に立つ必要があると考えた。訪中に当たって助成金の一部(30万円)が共同研究の資金として提供された。それと共に,出来得ればという願望もあった,資料の閲覧と写真撮影,討論,そしてきわめて微量で足りうる繊維試料の採取などの希望事項を先方に伝えた。この時,他の調査で中国に赴いた日本人研究者から中国における資料閲覧に要する費用の高額なことや,実際のところ,現在,このような国際研究に対する公式な取り決めが中国にないことが知らされた。様々な助言や知識の提供があったが,すべてが初めてすることであった。それは先方においても同様であったようである。相互の文書交換がかなり頻繁に行われたが,回を重ねるごとに様子が変わっていった。武敏女士の第一報すなわち共同研究への当初の好意的な誘いとは異質なものになっていった。それから毎度の手紙に様々な金銭の額が記されてきた。それには以前に行われた新聞社や大出版社が行ったシルクロード関係の企画事業において支払われた金額であったこともある。単なる研究者のレベルをはるかに越えた金銭の額とそれを毎回伝えてくる意図は理解しがたいものであった。現地では,博物館訪問の冒頭から盛春寿副館長の立ち合いで「中日共同出版<吐魯番阿斯塔那一吟剛和卓古墓出土染織品研究>討議書意向草案」のもとに巨額な資金の必要が示された。毎度金銭に関わる論議か提出されたが,それは実際のところ中央から遠い自治区博物館やその研究者の生活に迫っている今日の中国の解放経済がもたら-28 -*
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