鹿島美術研究 年報第12号別冊(1995)
383/588

1)シーサッチャナライ地域(スコータイ県)る。ではごく一部をのぞいてラオスの発掘調査については知られておらず,今後の調査研究に期待したい。製品は褐釉や白濁釉を掛けたものが中心であり,鉢や碗・壷などの断片を採集した。鉢の多くは口部が釉剥ぎになっており,口部同士をあわせて焼いたと思われ,また内部には滑らかな白濁釉を丁寧に掛け,外部には褐釉をごく薄く掛けるという施釉法など幾つかの点でサンカンペン窯やパヤオ窯と共通する要素が見て取れ,交流関係の解明など今後の研究課題である。総体に白濁釉を掛けた鉢や広口壷も焼いており,かなり上手の製品を手掛けていたことが推察される。く中部タイの諸窯〉シーサッチャナライの諸窯は,旧シーサッチャナライ城の北部,ヨム川右岸添いに細長く点在するー大窯群で,この地域で焼成された製品がサンカローク(宋胡録)の名称で呼ばれるタイを代表する陶磁器である。今回は城壁のすぐ北側のパーヤン窯およびその周辺の窯,北部のコーノイ窯群など3区域,約10基の窯址を調査してきた。コーノイ窯の発掘調査は80年代に入ってタイとオーストラリアの共同調査がおこなわれその成果が徐々に発表されつつあるが,現地には発掘された窯址がそのまま陶磁博物館として立派に整備され出土資料とともに一般公開されている。窯は重層的に築かれており,もっとも下層の奢窯から地表の煉瓦窯までが立体的に観察できるように工夫をこらした掘削展示により,この地区の窯の発展の様相を手にとるように見学できる。最初期の製品はコーノイ北部で焼かれた無釉の陶器で11世紀から12世紀に比定されている。施釉陶器のもっとも古いものはやはりコーノイ北方で焼かれた「モン・タイプ」の名で呼ばれる黄緑色や黒褐色の釉薬を掛けた陶器で,およそ13世紀から14世紀ころと推測されている。このモンタイプの製品は,施釉法や器形等の特徴に加え,ロ部同士を重ね合わせる焼成法などの類似により,前述したサンカンペンやパヤオなど北方タイ陶磁との関係が推測されているが,今回採集したモン・タイプの鉢の陶片を観察すると,見込みに目跡を残したものや口部を波状に削ったものなどが含まれていて,次代への発展的要素も存在するように思え,より深く検討する必要性が感じられ-373-

元のページ  ../index.html#383

このブックを見る