1)サコンナコン窯(サコンナコン県)2)ブリラム地域(ブリラム県)く東部タイの諸窯〉この古窯址群は昨年発見されたばかりで全く未紹介の遺跡である。窯址はサコンナコン市の北70キロにあるソンクラム川の川岸にあり,今回は3地点19基を調査した。窯は川岸の斜面を利用して築かれ,各地点毎に数メートルの間隔で散在している。窯構造は明瞭にはわからないが外見はシーサッチャナライやスコータイなどの窯と似ており,やや小振りの窯である。陶片は褐釉を掛けたものと焼締めのものとがあり,採集できたものは甕や壷がほとんどで,鉢が若干含まれる。肩部に波状の刻花文を施したり,山形の突起状の小さい耳を貼りつける点など,シーサッチャナライなど中部の他の窯との類似点も見られるようであるが,断片的な資料のため詳しいことはわからない。タイ考古局の研究者は15■16世紀頃と推定しているようである。バンクルアト地域の5ケ所の窯とノンキ地域の1ケ所の窯を調査。バンクルアトではバンサワイ窯とナイジェン窯に古窯址全体を覆う建物が作られ,古窯址博物館として一般公開されている。各窯址で黒褐釉と灰釉の陶片資料を採集。バンコクヤーンの小学校敷地になっている窯址などでは,表面で採集できる資料はほとんどなく,地点により調査内容にかなり精疎の差が生じる。クメールの焼き物は総じて柔らかく焼上かってもろいが,今回調査した窯の製品はいずれも同様の性質を示している。またいずれの窯もほとんど同種の製品を作っていて区別し難い。底部はベタ底のものが多いか,糸切りの跡がのこるものが少なくなく,そのパターンからしてシーサッチャナライのモン・タイプの同じく反時計回転の庫鹿櫨で切り離している。クメールの製品はモン・タイプとの深い関係が窺われるが,釉薬や造形以外にもこのような基礎的技術を共有する特徴が観察できる。以上,今回の調査で訪れた古窯址の概要と特徴などを概略記してきた。タイ陶磁の調査と研究は,これまで欧米人の主導によりおこなわれてきたことが否めないが,最近の古窯址調査や報告書の刊行などを見るかぎりタイ人研究者による活動も活発化してきていると実感した。特に報告書はタイ語で出版されているものが結構多く,当然ではあるが今後のより深い研究にはタイ語の理解は不可欠であるという印象を強くした。-377-
元のページ ../index.html#387