図1ペドレー,サン・キルセ教会中央祭室(ソルソーナ美術館)⑰ ペドレー,サン・キルセ教会壁画について研究者:お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士課程はじめにカタルーニャ地方,ペドレーのサン・キルセSanQuirze de Pedret教会のロマネスク壁画は,保存のため,1907年に南小祭室の一部(「10人の乙女」と「エクレシア」)かバルセロナの城塞公園美術館(カタルーニャ美術館の前身)に移構された。その後,両側小祭室の残りの部分が1922年にカタルーニャ美術館へ,中央祭室部及び,凱旋アーチ部がソルソーナSolsona司教区美術館に1937年に移築された(注1)[図l]。当作例に関しては,前世紀末より報告されているが(注2)'当初より,ロマネスク壁画の傑出した作例であることが認識されていた。本論では,最近ホアキン・ジャルサにより,イタリア壁画との関連が具体的に提喝され始めたため,再び注目されているペドレーの壁画について現在の研究概況を中心に述べたい(注3)。1.記述ペドレーのサン・キルセ教会は,10世紀に3身廊,3祭室(方形の中央祭室と半円形の両側小祭室(注4))のプランを有していたが,12世紀の改築で南側廊を失い,その後,各祭室間に通廊が設けられた(注5)。(dir. Calderer i Serra, J. : Museu Diocesa i Comarca/ de Solsonaより)浅野ひとみ-389-
元のページ ../index.html#399