鹿島美術研究 年報第12号別冊(1995)
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1-(3) 蘇載像の比重427),李白(701-62),杜甫(712-70),白楽天(772-846),林和靖(967-1028)13世紀の状況表2に示したとおり,陶淵明,杜甫,白居易への賛は見られるが,蘇試の画像に関14世紀の状況表3に示したように,陶淵明,李白,杜甫,白楽天,林和靖については見えるが,15世紀前半の状況別表4は,蘇拭に関する画題の種類の増加傾向を表したものである。横軸は詩文作者の没年,縦軸はその年までに出現した画題の種類である。最も顕著な変化は,1520年代に起きている。蘇拭の画題はそれまで順調な増加を示しているのに,1520年代までにほぼすべての画題が出尽くし,その後はほとんど増えていない。蘇拭とともに,日本で絵画化されることの多かった中国の文人としては,陶淵明(365-がいる。中世の禅林において尊重された中国の詩人についてはすでに芳賀幸四郎氏によっておおまかな輪郭づけがなされている(注1)。すなわち『翰林五鳳集』にみられる,各詩人について詠まれた詩は,陶淵明65首,李白41首,杜甫45首,白楽天5首,林和靖28首,黄庭堅20首であり,これらを引き離して蘇試は100首にのぼる。では実際に蘇載像が絵画の分野においてどの程度重要であったかを,これらの文人像との対比によりおおまかに位置づけてみる。わる詩文は見られない。賛は必ずしも,絵画作品の存在した確実な証拠とはならない。しかし画像に対して作られた可能性は高いので,ここでは画像の史料として援用する。蘇拭に関しては,赤壁図の可能性の残る無巌祖応の題詩と,蘇公堤を含むと看倣せる「西湖図」が春屋妙砲の1易頌にあるだけである。画題が蘇拭に関係する絵画作品が出現したことを裏付ける確かな史料はまだない。この時期に作られた題画の詩文は非常に多い。そこで代表的な禅僧の詩文集をいくつか見てみる。西胤俊承(1358-1422)には「雪堂図」「東波笠展図」「東波雪中会衆星堂図」「杜陵草堂図」「五柳先生図」「子猷訪戴図」「夕佳楼図」「題伯州菊暁上人山陰芽宇図」「三笑図」がある。王徽之は2件,陶淵明3件(33%),杜甫1件,蘇試3件(33%)であり,蘇試は陶淵明とともに1位である。惟忠通怒(?-1429)には「題趙子昂画夕佳楼図淵明詩山気日夕佳飛鳥相与還」-406-

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