鹿島美術研究 年報第12号別冊(1995)
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(3) ルーヴル美術館所蔵,手鏡外枠(inv.O.A.MR2608-9),大英博物館所蔵,「聖ア(6) 所蔵番号,M350-1912.1912年に,ジョン・テイラー・コレクションから購入。(7) 展覧会カタログ,Lesfastes du gothique. Le siecle de Charles V,パリ,グラand Albert Museum. An Introduction to Medieval Enamels,ロンドン,1983年(8) 現在,ブリュッセル,王立美術歴史博物館所蔵,所蔵番号1223352。19肌紀末ま(9) アルトーティンク修道院付属聖堂所蔵。1404年の新年にフランス王妃イザボー・fig. 38参照。最近では,同じくヴィクトリア・アンド・アルバート美術館刊行の中世グネスの杯」(inv.M&LA 92, 5-1, 1)等。(4) 各作品の主題については,以下の作品記述を参照されたい。(5) 以下に紹介する福音書記者ヨハネを描いた額絵型聖遺物容器及び洗礼者ヨハネを描いた七宝パネル(共にルーヴル美術館所蔵)において,前者では福音書記者のマントと地面の草色の間,右側中景の根元の草の穂との境の部分,後者では聴衆の中の女の赤いマントの周囲に僅かながらにじみが認められる。作品の保存状態,修復の有無により七宝釉の状態を判断するのは慎重を要するが,一般に色のにじみはまれで,故意に複数の色がにじむ効果を狙ったイタリアの作品とは傾向を異にする。それ以前の米歴は不明である。ンパレ美術館,1981-1982年,no.215においては1380年頃と推定されているが,その根拠は明らかにされていない。聖遺物容器を所蔵するヴィクトリア・アンド・アルバート美術館は,14世紀末とさらに幅の広い年代を提示する。M.Cambell, Victoria の宝飾品のカタログにおいて,ライトバウンは1370年から1395年頃と推定している。額縁の装飾様式から,14世紀末の作品と判断した上で1376年にベリー公がブランシュ・ドルレアンに聖カテリナの聖遺物容器を贈呈している事実,大英博物館所蔵の「聖アグネスの杯」と七宝の技法が近いことを指摘して,上記の年代を引き出している。このうち,文献資料の詳細な検討はさらに興味深い傍証を見い出す可能性があると考えられる。ではベルギー,トングル(トンヘレン)のサン・ジャン聖堂に伝わる。制作年代については,Lesfastes du gothique, no. 214参照。当カタログでもパリ産とは断定していないが,トングルが金工の中心地であったリエージュに隣接していることは,当接吻牌の様式の特色と併せ,今後十分に検討しなければならない。ド・バヴィエールからシャルル六世に贈られた。中心に丸彫り七宝の小像などを配-464-

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