八>抽象的図形だが躍動感に満ちた大鹿の錦は,図1.2と同様に四角に裁ち切られ,面衣の残闊であろう。面衣は経錦でも緯錦でも作られた。これはソグド製サミットと見倣すべきであろう。しかし武敏氏は,これを唐代の経錦と見倣し,かつ強調する。図版の断片右手の,ばらばらになっている色糸を‘経糸’と見ているからであるが,ョーロッパでみるこの種の錦の完形品では,これは織耳(註.織物の最も外側に配置される経糸からなる部分)の部分である。補強のために非常に太いコードのような経糸を使うが,完成後に適宜抜き取ってしまうのである。このような織耳の作り方は,ラグの耳にも見られ,これは,毛織物圏の所産である。また,武敏氏が強調するのは,模様の出し方だが,これもまた六朝経錦で特徴的であったと同じく経糸に対して横向きに織ると言う。しかし,ここでは模様の縦が経糸の方向である。連珠円環文は東方錦によく見られる。図4連珠鹿文錦く59TAM332:5〉・緯錦・唐麟徳2年(665)の紀年をもつ墓(332号)出土-41-
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