11日には東京に移動。初日は東京国立博物館,国立西洋美術館等を訪れたか,あい1935年生まれのベルティンク氏は,戦後の美術史研究世代を代表する研究者として,にく展示改装中その他の理由で,所期の目的を達することが出来なかった。12日は14時より東京国立博物館講堂において,「西欧芸術の形式としてのイーゼル絵画の成立」の公開講演を行なった。その後は越宏ー教授の案内で東京芸術大学芸術学科の研究室を訪問,院生等と懇談した。翌日以降は鎌倉の社寺を見学するとともに,ワタリウムを始めとする東京の現代美術画廊を訪問。現代アジア,日本の美術に関する資料多数を収集した。15日に成田空港より帰国した。ドイツのみならず,米国においてもそのひろい活動によって多くの影響を及ぼしてきた。とくに1980年代中期以降は,進んで現代美術と批評の諸問題にもかかわり,本来の中世美術に関する斬新,かつ広範な研究と相侯って,今日もっとも語られることの多い研究者である。その氏にとって今回は初めての東洋訪問であり,本務地における多忙なスケジュールの合間を縫って招請に応え来日してくれたことは,招請者にとっても大きな喜びであった。当然,在日期間中氏の接した人々は,美術史のみならず,仏教,神道関係者,美学,現代美術のプロモーター等ひろい範囲におよび,離日の際には,ほとんど200ページに上るノートを作成するほど,精力的に討論,調査を行なって帰った。他方,幸い美術史学会,朝日新聞社等の後援を得たこともあって,公開講演には充分なパブリシティーが行き届き,大阪,東京ともに200名近い多数の聴衆と活発な質疑応答を行なうことが出来た。招致者はこの数年間,マイケル・フリード,ノーマン・ブライソン等現在国際的に第一線で活躍する研究者を招いてきたが,今回は関係参加者の範囲のひろさ,その数,反応の活発な点においてもっとも成功したケースと考えている。財団の支援,関係者の熱心な協力に心から感謝する次第である。-512-
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