鹿島美術研究 年報第12号別冊(1995)
525/588

② 「アビー・ヴァールブルグ一人と業績」(AbyWarburg-his life and work) されておらず,その人と業績についてはもっぱらエルンスト•H.ゴンブリッチの著期フリー美術展キュレーター招致研究者:クリストフ・ガイスマール(Dr.Christoph Geissmar) 報告者:東京ドイツ文化センター文化部長マルクス・ヴェルンハルト間:平成6年5月3日〜5月15日近年アビー・ヴァールブルグの業績に関する学術的関心は,ヨーロッパをはじめ世界的に増してきている。しかし,その仕事があまりにも総体的な要素を持つために,その解釈や応用はヴァールブルグ自身の考えとは異なっている例が多く認められる。一方では関心が高まる中,日本ではヴァールブルグ自身の書物は邦訳の形では刊行書「アビ・ワールブルク伝」(1986年/晶文社)を通じて伝えられているに留まっている。今回,日本で開催された美術シンポジウム「アビー・ヴァールブルグ一人と業績」に参加した研究者,美術専門家の方々の多くも,その例外ではなかった。以上のような現状の下,ドイツの優れたヴァールブルグ研究者,クリストフ・ガイスマール氏が日本の研究者諸氏と意見交換の場を持てたことは,いたって有意義,かつ今後の日本における美術研究の方向を示唆するものであった。ヴァールブルグの理論の解釈をめぐって,誤解を解くことにつながったばかりでなく,ヴァールブルグ自身とその業績に関する意見交換は日独双方にとって非常に実り多いものとなった。パネルディスカッションの形で進められたシンポジウムでは,長く,また中身の濃いディスカッションが展開されたが,それは日本における翻訳の問題から生ずる情報の欠落を補う役割を果たし,またそこで伝えられた新しい情報と認識を今後の研究活動に役立てて頂く材料となった。今回のシンポジウムで得られた成果は,アビー・ヴァールブルグに関する問題に留まらず,日本における美術研究の諸問題に関する論議と省察に寄与することを確信している。-513-

元のページ  ../index.html#525

このブックを見る