2)平成7年4月1日アルス・ウナ日独芸術学研究会主催場所慶応義塾大学ルスのロマン主義的風景画芸術に大きな役割を演じました。18世紀の半ば以後,これら両島の魅力は風景画芸術のために発見され,ゲーテの師,ヤコブ・フィリップ・ハッケルトは最初にリューゲン島の風景をドイツ芸術に導き入れました。彼に続いて啓蒙時代と初期ロマン主義の詩人,ルドヴィヒ・テオブル・コーゼガルテンはイギリスの初期ロマン主義的な自然抒情詩と並行してリューゲン島の美しさを抒情豊かな自然詩で歌いました。彼の汎神論的世界観はアカデミックな素描画家ヨハン・ゴットフリート・クウィストルプを通じてフォアポンメルンのフリードリヒと他の若い知識人に導かれ,ドイツ絵画における初期ロマン主義の印象深い風景画を形成する礎石を築きました。こうしてリューゲン島とフィルム島の自然景観はそのための絵画とデッサンの重要なモチーフとなったのです。次第に高まりいくロマン主義化の過程はリューゲン島の風景の造形的モティーフにおいて跡づけられます。例えば同島の最北端のアルクーナ岬の岸壁に関して,初めは正確な地形的現実の観察から出発し,逸話風の描写を経て,次には17世紀のオランダの風景画家たちの伝統を辿りつつ,カスパー・ダヴィト・フリードリヒは最終的にロマン主義的な造形的把握に達しました。それは彼の自然に対する主観的意図が汎神論的を世界観として解釈されます。このことはフリードリヒの特徴的な構図法,つまり暗い影を帯びた前景,中景を欠いているが,明るく輝く後景といった構図法から読み取れます。それは一方では世俗的生活の抑圧と,他方では神的な彼方の至福の世界を望み見る信念との間に見られる対立として,その象徴的表現と見られます。講演題目「ドイツ初期ロマン主義のカスパー・ダヴィト・フリードリヒの世界像の形成に対するルードヴィヒ・テオブル・コーゼガルテンの意義」講演内容の要約本講演は上記1)と密接に関連し,ロマン主義的な自然把握と芸術把握の形成と深化が次第に進んでいく過程を,同時期のイギリスの詩芸術の初期ロマン主義的な自然抒情詩とのアナロギーおよび相互作用において,いかにその自然抒情詩がリューゲン島に生きていた詩人コーゼガルテンを経てフリードリヒに作用したかを考察しています。コーゼガルテンの汎神論的自然観は美を,“自然における神的なもの”と捉え,‘‘調-530-
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