鹿島美術研究 年報第12号別冊(1995)
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Prambanan & Ratu Bokoの諸スタッフと交流することができた。彼らとの討論から,ー教と仏教のチャンディであり,これらのレリーフは8■ 9世紀当時の音楽慣習を伺い知る重要な資料と考えられる。これらの図像資料を画像データベース化し,楽器や演奏法の描写,および合奏における楽器の組み合わせ方等の点から,両者の詳細な比較検討を行なった上で,ボロブドゥールの様々な奏楽・舞踊図レリーフとの比較を試みたい。インドネシア政府は近年,宗教建造物等の遺跡の修復・保存に力を入れている。ボロブドゥールやプランバナン等の世界的に有名な宗教建造物は,遺跡を中心として,博物館も含むりっぱな観光公園に姿を変えている。しかし,本格的な修復・保存に着手する以前に収集された諸遺跡からの出土品を収蔵する博物館においては,キャプションの不備に加えて,博物館員の知識不足等,収蔵品に関する情報提供サービスが非常に貧弱である。恐らく収集時の記録が不完全であったためと考えられるが,収蔵品の中には考古学的・美術史的に重要な資料も多いので,収蔵品に関する諸情報の完備が早急に望まれる。今回の派遣で,腕チャンディ観光公園Pt. Taman Wisata Candi Borobudur, 現在はまだ遺跡保護を推進する段階であり,宗教建造物を取り扱った本格的な研究は,ィンドネシア国内ではそれほど進んでいるとは言えないということがわかった。特に,レリーフの楽器に関する図像学的研究を行なうインドネシア人研究者は,現在のところ皆無である。本研究が,インドネシアにおけるチャンディ研究の進展に,なんらかの刺激を与えることを願っている。-539-

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