鹿島美術研究 年報第12号別冊(1995)
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の土器,仏教彫刻,陶磁器,漆器,金工品が含まれるが,今回の調査では,絵画を対象に調書の作成およびカラースライドによる研究資料写真の撮影を行なった。その結果として,平安時代の紺紙金泥経(神護寺経),鎌倉時代の涅槃図,阿弥陀来迎図,時代不同歌仙図,室町時代初期の白衣観音図をはじめとして,室町,桃山,江戸の各時代にわたる興味深い作品を実査することが出来た。なかでも,式部輝忠筆の瓜図扇面を含む室町後期・桃山時代の制作と考えられる水墨画作品10余点を見出せたのは幸いであった。他に琳派の作品として宗雪筆の朝顔・竹雀図,伊年印の秋草図,光琳筆菊に流水図団扇も認められた。無論,蔵品中には,雪舟筆,相阿弥筆などと称する贋物も数十点を数えるが,比較的広範囲にわたって満遍無く集められたコレクションとして評価され,研究上多くのものを得られ,以後の活用が期待されよう。この調査に基づき,今後,整理検討の後,ニューヨークのジャパンハウスギャラリーで,この個人コレクションの展覧会の可能性も考えられている。その際は,カタログの制作が計画されており,コレクションの全貌も明らかにされるであろう。ランゲン氏コレクションの調査以外の各地美術館での蔵品調査については,時間的な制約もあり,すでに知られている作品の確認にとどまったが,ケルン東洋美術館では,旧国宝で第二次大戦以前(明治末年に盗難)に海外に流出して以来所在不明であったところ最近同館に所蔵されていることが明らかになった,京都府・榜厳寺蔵の不動明王三尊像を詳細に調査することが出来たのは大きな収穫であった。-551-

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