して昨年来積極的な準備が進められ,私たちにも早く参加の招請があった。その結果国の内外から200余名の申込みがあり,研究発表希望者の提要(サマリー)送附も146件に達した。それらは全文が中・英両国語で印刷され,参加登録の際参会者に配布された。による左右映写など,近代的設備を整えるため講堂を単一化せざるを得ず,分科会を設けぬという方針に従って,発表者を厳選したが,それでも総数60名に達し,前記の日程では見学と併せかなり過密なスケジュールとなった。しかも発表の内容は前回,前々回に比べても全体に水準か高く,極めて密度のある国際会議となった。私など専門領域外の歴史・文献学等の新研究を傾聴し得たことはよい勉強になったと思っている。2)会議内容の特色参加者について注目されたのは,ヨーロッパ諸国,アメリカ,日本,インドなどのほか韓国12名,台湾31名が加わったこと。また中国内部でも各地の大学や文物研究所,遺跡担当者などが多数来会し,敦煙との比較などについて広い視野からの発言が見られた。個々の発表について列挙論評する余裕はないが,特に印象深かった点を述べておく。第ーは中国の若手(30オ台)の研究者の優秀さで,彼等は敦煙研究院や北京大学などのスタッフとして,アメリカ(ハーヴァード大学その他)や日本(東京大学,神戸大学,成城大学,東京芸術大学,東京・奈良文化財研究所など)に留学し,博士号を取得あるいは準備中である。彼等は近代的な方法論を体得した上,莫高窟などの現地において細かい調査研究が出来るので,その立論には甚だ実証性があり,教示される点が多い。敦煙研究院からハーヴァード大学留学中の寧強氏による莫高窟220窟北壁図像の新解釈や,北京大学助教授でアメリカでホータン研究を学び『干閻国史』の著作もある榮新江氏が「蔵経洞」の閉鎖年代に関して提出した新説など,私には特に興味深かった。第二には,敦煙研究院の研究員や,蘭州(甘粛省)文物研究所,亀絃文物保管所などのスタッフが,それぞれの遺跡について,最近の考古学的調査結果を,豊富なカラースライドを示して報告されたことで,これも本学会における有益な収穫であった。しかし一方,三ヶ国語(中・英•H)の同時通訳装置やコダック杜製スライド2台3)石窟見学-557-
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