研究発表と並んで本学会参加者を益したのは,石窟壁画の細かい見学調査に便宜が計られたことである。莫高窟については通常公開しない主要諸窟を選び,小人数のグループに分けて交代で入窟させ,丹念な観察を許された。さらに今回初めて,安西楡林窟の見学が可能となり,遠距離(敦煙から180km)にも拘らず30余窟の全部を実見し得たことは,敦燈後期壁画の編年や,絹絵との関係考察に役立つところが大きかった。最後に付言すれば,私は研究所の創立者で多年その発展に尽痺され,晩年は名誉所長となられた常書鴻氏(今春逝去)とは1958年来知遇を得,また段文傑現所長とも十数年以上の友誼に結ばれるので,今回も参会を大変に喜んでいただけ,会議前後の特別見学など種々高配に与った。さらに国外からの参加者では最年長とのことで,開会式に祝辞を述べ,研究発表も所長についでの順位を与えられたことは,まことに光栄と思われる。-558-
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