聞紙上や雑誌の“お知らせ欄”でセミナー開講を知った一般の人達が参加され,その年齢層も様々で,主婦や公務員,第一線を退いた銀行マンや外交官などが,毎回,熱心に聴講されています。ディ・ヴィータ教授の講演会もこうした来聴者によって強い関心を寄せられ,講演後もさらに質疑応答がつづき,それからやがて質問者の個人的な体験談などもつけ加わり,教授との和やかな交歓がいつまでもつづいていました。東京大学での文学部および大学院の学生への教授自らが行った発掘調査の報告なども貴菫なものでした。こうしたディ・ヴィータ教授が今回の来H中に行った講演会や研究会が日本のギリシア・ローマの美術史および建築史を専攻する学生や若い研究者にとって益するところが多く,これまでの限られた文献資料のみからでは知りえない,ヨーロッパ古代文化研究の実際の地で研究活動を続けてきた教授の経験・体験を通しての実理と実証に基づいた生き生きとした歴史感覚にみちた考古学あるいは西洋美術史研究から,新しい知識や情報を直接得ることが出来た大変好い機会になったことをここに確信し,さらにまた教授の歴史・美術に対する深い理解が,日本のこの分野の専門家の方々にもヨーロッパ学界の現状を把握させ,新たな視点から今の国際的な論争点に目を向けて解明のための手掛りを共に探求していこうという刺激をも与えることが出来たのではないかと考えています。-569-
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