165面の,正面,裏面,左右側面,そして特定の部分撮影を,4月22日迄,568カット60面,狂言面15面,作柄も(下)位の能面36面,狂言面5面という分類にした。ァイルを制作した機会に,内容把握の為の素人写真であるが,165面全部の写真撮影,提供を申し出,許可を得た。4月19日,快晴の好天に恵まれ,4階,ビール氏の実験室に於いて,自然光による撮影。この際,在庫面の良否を選別する。今回の調査で,能,狂言面は優れた上位クラス創作期の能面は一面も無かった。時代性については,田辺氏に依存するが,桃山期から,江戸期のものに限定され,中程度,それもやっと(中の上)になる能面47面,狂言面2面,(中)に位する能面4月22日,ボストン美術館としては良否は別として,コレクションとしての在庫面が,これ以上悪い状態になるのを恐れ,165面全部の修復を希望され,今後の支援を如何にすべきか考慮したいとのことであった。そして,今後,ボストン美術館として,能面の地位向上に努め,重要さ,仮面としての面白さについて,すくなくとも展示出来るようにまで修復し,良いものだけでなく,良いものを中心に,何回かに分けて,出来れば,館の技術者にも指導して欲しい。又,出来得れば,収蔵の場所,桐箱,面袋に関しても検討したい。長期滞在となる可能性もあり,これらを一括して考えたいとのこと。田辺氏も,伎楽・舞楽面とは違い,能は今日でも上演されている芸能で,生きた仮面として,使える“能面”に修復したい。美術品として,古面として保管するのならば,これ以上費用を掛けるべきでないと主張され,ボストン美術館としての意向をまとめる為にも予算を早急に計算して報告したいと申し述べられた。美術館としては,例えば洗浄ということが,真白にして原形をとどめないものになってしまうのかどうか,アメリカの美術館では,修復の場合,学芸員と相談しながら許可を得て実施するのが規則であり,この方法も一つ一つ大変な時間と説明がいる。学芸員に能面の認識をさせながらの方法では修復もはかどらないことが予測され,心配は充分理解出来るが,“能面”は“刀と筆”と言われるように,彫刻は良くても彩色が悪ければ,能には使えない。両方が良くて初めて“生きた面”として価値が出る。今回は,彩色の復元が目的である。古く創作期の能面の彩色が今,出来たばかりかと思わせる程,新鮮な色彩をもっていることが屡々ある。このように彩色も出来るだけ創作期の色(私はこれを地色と呼んでいる)に近づけ,カビ,シミを極力取りのぞ-574-
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