鹿島美術研究 年報第12号別冊(1995)
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き,洗浄したものについては,新たに古色(古び)を施すと説明する。又,修復について,どの様な場所で,どの様にするのか心配しているのは充分理解出来るが,仲々納得出来るものでも無く,“百聞一見に如かず”の諺どおり,修復の実際を目の前でやってみせることにする。ベンゼンで拭いたが,長年のカビ,シミは取れなかった。結局,蒸留水による洗浄と刷毛によるシミの削除を行なった。次に,Res21-9“般若”をチョウ鮫の骨のニカワるが,胡粉の塗膜は反り上がり乾いてゆく。接着力も弱いので木部との接着前に分離してしまい,従来の胡粉やニカワにもなじまず,時間も無いままにどうなることかと焦ってしまう。モース氏の提言で“ボンド”に切り替え,やっと押さえることが出来てホッとしたが,既に午後8時を過ぎていた。ドライヤーで髭の形を整え,ビール氏,モース氏も驚きの声をあげ,喜んで居られた。“山姥”,“般若”が修復半ばで帰国することになり,後髪を引かれる思いだったが,“能面も,私達もそしてボストン美術館も待っています”と慰められて,美術館に別れを告げ,25日帰国しました。以上のように,美術館での調査,討議,記録,修復説明について,ご報告申し上げます。(STURGEON'S GLUE)で押さえてみる。たしかにシミによるクマは出ないで助かNo.11-5975‘郡郡男”に磨きをかけ,生き生きとした艶を出し蘇生させる。No.11-6005“鼻瘤悪尉”の髭を洗剤で洗う。汚れが落ちて見違える程きれいになり,4月22日,11時よりNo.11-5954“山姥”の洗浄を試み,提供されたペトロリアム-575-

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