19作家34点の小規模な展観だが,表現主義の代表作家が多く含まれ,カンディンスキ年12月1日から15日まで開かれたのが「北欧新興美術展覧会」で,会場は中原賞の画第一次世界大戦後のドイツでは,前記の村山や永野以外にも当時の前衛的作品を熱心に収集した日本人が何人かいた。美術批評家および作家として活躍した仲田定之助,建築家石本喜久治,ドイツ駐在中に表現主義の作品を精力的に収集した日本銀行の宗像久敬らである。彼らが将来した作品を中心に1924年に二つの重要な展覧会も開かれた。そのひとつ「欧州表現派展」は,同年6月21日から30日まで丸善書店新館で開かれ,ーは宗像が将来した油彩画《裸婦》[図6]'仲田所蔵の水彩画2点[図7,8 ],石本所蔵の素描[図9]か出品された。この時の出品作を含み,規模をさらに拡大して同廊九段であった。出品作は97点で表現主義以外の作家も多く含まれ,「欧州表現派展」に比べさらに幅広くヨーロッパの前衛美術を紹介している。カンディンスキーの作品は,「欧州表現派展」の出品作に宗像所蔵の油彩画《即興8》[図10]と仲田所蔵の版画集《小さな世界》が加わった計17点であった。この1923-24年に開かれた三つの展覧会で公開されたカンディンスキーの作品は,点数こそ多くはないが代表作といってよい油彩画をはじめ質の高い作品ばかりであり,「DERSTURM木版画展」を除き,それまでの文献紹介のみの状況を考えると実に画期的な出来事であった。図6カンディンスキー《裸婦》1911年,油彩・カンヴァス,ロスアンジェルス,フレドリック・ウェイズマン夫妻蔵-59 -
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