同同日本美術協会は,ヴェネツィア市長の要請(注14)に応じて目録を編纂した(注15)。それによると104点の作品は大きく「絵画之部」と「器物之部」に分けられ,前者には「絹本」と「絹本掛物」が含められた。「器物之部」はその他の工芸品,すなわち七宝や青銅,香燻,花瓶,染物,刺繍,押絵などである。この目録に基づいて編纂されたイタリア語の目録(注16)はしかし,この分類を踏襲せず,「Gaku」(額),「Kakemoni」(注17)(掛物),「金属,木,象牙の彫刻」,「陶磁器」,「漆器」,「その他」と分類している。ここで注目したいのは「Gaku」という分類である。広辞苑によれば「額」とは「紙・吊,または板などに,書・画を書いて,室内もしくは門などに掲げておくもの」であり,日本語目録が「絹本」(但し「掛物」を除く)と付記して出品した「絵画之部」の作品は,すべてこの定義に当て嵌まる。しかし,「器物之部」の中にも「額」やその類似の表示が題目中に書き込まれているものが,以下の通り9点存在するのである。(左端の番号はイタリア語目録で付されたものである)このうち80,93は「Gaku」の分類には入っていない。イタリア語目録で「Gaku」とされたのは7から35までの7点で,それらは刺繍,染物,押絵である。これらの作品の「Gaku」は,広辞苑の定義が意味する作品全体としての「額Jではなく,「額縁付」と解釈すべきである(但し8番の飯田新七の作品「壁掛」は例外的に「Gaku」に含まれていた)。「絵画之部」の「絹本」も含めて,上に挙げた作品に付されていた額縁がどのようなものであったかは,パルマ市の雑誌『芸術に寄せて(Perl'arte)』にチェーザレ・スペラツが発表したビエンナーレ評が明らかにしている。これらのgakuの額縁を見てみれば足りる。すなわち,最高に繊細な陰影を施した7 一剌繍雪中松牙鳥画額8 ー天鵞絨友染富嶽圏壁掛21 一繍子地刺繍鎧櫃園額22一嬬子地繍詰日光湯瀧圏額同23 ー天鵞絨友染深山鷲圏額34 一押綸道成寺圏額35 ー同名古曾闘圏額80 ー蒔綸芝山入秋草丸額93 一省線七宝山水額一面京都飯田新七一枚同人一面京都西村縛左衛門同人同人一面京都田中利七〔図2〕同人一個池田泰箕・芝山宗一一個涛川惣助〔図1〕〔図3〕-3-
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