厚16.5cm。頂部は6頭の龍が絡む縞首。正面は碑首題額部に寵を設け,右方に如意をイテイア窟に彫り出されたストゥーパが方柱に置き換えられたとされているが,石窟の方柱の中には頂部に帳幕や瓦葺きの屋根を備え重層建築風に造られるなど,闊や宮殿や楼閣等に近い。前述したように中国では古来柱や闘に彫刻することが盛んに行われており,石窟内の中心柱についても当然中国的な「柱」や「闊」の神話的世界観が投影されていると考えて良いであろう。以上のように造像碑にはいくつかの系統があり,最終的には系統別に表現形式や造像目的(用途)を整理する必要があると思われるが,同時にこの種の造像全体の大きな傾向や流れを掴むことも,南北朝時代の仏教造像史研究にとって重要で,今後一層の情報収集と作品の調査が必要とされる。昨年度中に欧米の美術館で調査した主な造像碑は11件である。以下にその概容を述べて調査報告としたい。ただし,11件のうち2件(米国メトロポリタン美術館所蔵東魏武定元年銘像,同ペンシルヴェニア大学博物館所蔵北斉天保二年銘像)については,それぞれ著名な作例ではあるが,今回の調査により製作に若干問題があると思われるので,今後慎重に検討を行った上で報告したい。(1)魯山王造像碑〔図1〕北斉・天保9年銘(558)。パリ・チェルヌスキー美術館。石灰岩。高132cm。幅60cm。持つ文殊菩薩,左方に塵尾を執る維摩詰,維摩の側に天女,下方に聴聞の比丘達を彫る。碑身部上段は如来坐像を中心に2弟子,2菩薩像を配し,下段は如来坐像を中心に2弟子2螺髭2カ士像を彫る。背面は碑首に如来坐像と脇侍の弟子像,碑身上段に造像記,下段に供養者名を刻む。右側面上段は二仏並坐,中段は坐像,下段に邑子の名前を彫る。左側面は上段に菩薩半珈思惟像と馬,下段に如来立像と童子を表す。背面の銘記には「大齊天保九年歳次戊(?)寅四月戊午朔七(廿?)日」(中略)「魯山王等(中略)敬造七級浮薔一幅中有六龍石像學?高六尺」云々とあり,「六龍石像」はまさに6頭の龍を碑首に彫るこの造像碑のことである。像は北斉風の丸みのある顔と体つきで,衣文も柔らかく表現されている。(2)合邑四十人等造像碑〔図2〕北魏・神亀3年銘(520)。チューリッヒ・リートベルク美術館。砂岩。高127cm。幅-280-
元のページ ../index.html#291