(18) 『ハディース』には約22箇所で絵に関する記述が見られる。1)絵自体→「絵のある家」には「天使は入らない」,2)絵を描く者→「絵を描く者」は「復活の日に最もひどい罰を受ける」,3)偶像崇拝者たちの日常品→「瓢蹴,樽,松脂を塗った器や瓶は使用しない」と大雑把に分類できる。しかし,どの様な絵を指しているのかは判然としない。(19) 始祖マーニー自身が「画家」と呼ばれたことでも判るように,経典写本・教義解釈・布教に絵画を利用している。8世紀中頃に排斥され,中央アジアのウイグル諸朝に仕え,マニ教写本挿絵を制作し続けた。神学的影響は認められないが,イスラーム以前の文化を繋ぐ役目は大きい。(20) パラダイス,あるいはアラビア語のフィルダウス(天国)の語源が古代ペルシア語のパイリダエーザ=「壁に囲まれた場所」(楽園)に由来することにも現れている。また,ゾロアスター教が造形文化に与えた影響も今後の研究課題である。-339-
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