鹿島美術研究 年報第13号別冊(1996)
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注公的なものではない以上,実際に訪れて見るには紹介が必要であったに違いない。コレクションを見学するのは,自らも蒐集している愛好家同士や芸術家,また外国人旅行者が中心であった。公的な美術館が成立する以前にあって,蒐集家の邸宅のサロンはエリートたちの社交の場であり,初学者にとっては美術を見る目を養う研鑽の場であった。したがってこの時代の個人コレクションは,収集家の趣味が反映した富裕な階級の楽しみという性格と美術作品に対する学問的アプローチという性格とを合わせ持つ曖昧な存在であったと思われる。同時代の資料によれば,コレクションの評価は,当然のことながら,陳列されている作品の質によって下されたが,それを所蔵する部屋の内装の美しさも合わせて判断されていた。18祉紀絵画は美術愛好家にとって特権的な生活空間のなかで享受するものであり,それが絵画本米の機能であったと言えよう。したがってこのようにして享受された種類の絵画を考えるに当たっては,オテル建築の室内装飾という要素を十分に考慮しなければならない。(2) Gault de Saint-Germain, Guide des amateurs de peinture dans les collections (3) Hebert, Dictionnaire pittoresque et historique, Paris,1766. (4) A.-N. Dezallier d'Argenville, Voyage pittoresque de Paris, Paris, 1770, (7) Hebert, op.cit., pp.36-81. (8) Ph. Conisbee, Painting in Eighteenth -Century France, Oxford, 1981, (9) 『フラゴナール展』東京,国立西洋美術館,1980。(1) E. Bonnaffe, Collectionneurs de l'ancienne France, Paris, 1873, p.65. g紐eraleset particulieres, les magasins et les ventes, Paris, 1816, pp. 38-40. 1778. (5) L. -V. Thiery, Guide des amateurs et des etrangers a Paris, tomes I -II, Paris, 1787. p.26. (10) Chardin, cat. exp., Grand Palais, Paris, 1970. (11) C. F. J oullain, Reflexions sur la peinture et la gravure, Paris, 1786, (6) Thiery, op.cit., t.I, pp.104-105. -363-

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