蕪·荊・大根.百合・車前草•朝顔・豆・露草・瓢臨·芭蕉・鉄線・薄•藤などがあ水鳥と波・菊に波・龍に雲などのように脇役として添えられるにすぎない。最も多く用いられる文様の組み合わせは,獅子に牡丹・虎に竹・鳳凰に桐・龍に雲・麒麟に雲であろう。墓股などの数が少ない場合は,「喜多院山門」「鳳来寺仁王門」のように,これらの組み合わせのみで構成されるものも多い。ここで注目されるのは,想像上の動物である霊獣が多く用いられ,彫刻の文様を選ぶにあたって,置かれる位置には大きな意味があることがわかる。特に正面に置くものや,本殿内部に置かれるものは重要視され,そこに用いられる文様は霊獣が多い。特に四霊と言われる亀・龍・鳳凰・麒麟は,特別扱いで重要な位置に配置されるが,文様に優劣・上下関係があることがわかる。次に,比較的普通に見られる組み合わせは,牛に梅・兎に波・猿に果実・鹿に楓・鶴に松・栗鼠に葡萄・飛龍に波・菊に波・鷹に松・千鳥に波・錦鶏に牡丹・山昔鳥に椿・麒麟に雲・水犀に波などである。数は少ないが,鶯に梅・木菜に柏・雀に竹・鶉に粟・燕に柳・孔雀に松・猫に牡丹・馬に桜・鯉に波(滝)なども組み合わせがほぼ固まっており,近世の美術工芸品にも多く見られる文様の組み合わせである。組み合わせは定まっていないが,植物では万年青・桜・蒲公英・椿・水仙・竜胆.笹・柏・謡躙などは一般的な花である。実のなる木では栗.枇杷・桃・柿・蜜柑が日立つが,これらは猿と組み合わされることが多い。水草では,水葵・沢潟・河骨・芦・杜若が多くみられる。珍しい植物では,紫陽花・柘櫂・鶏頭・無花果・薔薇・華覧草・る。鳥では,想像の霊鳥である鳳凰を除くと鶴が最高の位置を占めている。例えば「秩父神杜社殿」は,正面に鶴亀と松竹を組み合わせた蓬莱文様を用いている。また,徳川家康を祀る全国各所の東照宮においては,鷹に松の文様が向拝の正面や,本殿内部の重要な空間を飾ることが多い。他の烏では,錦鶏・山昔鳥・孔雀・雉・鴨.鴫・鴛鴛・鷺.鶉.雀・鶯・木菟・臭・鳩・翡翠が比較的多く見られ,鶴鵠.燕・雲雀・鵜は珍しい鳥である。動物では龍・麒麟・水犀などの霊獣を除いて虎が最も多いが,これは「雲は龍に従ぃ,風は虎に従う」の故事により,火伏せの思想がその背後にあると考えたい。実際に宮城県の中新田町では,火伏せの虎舞が行われているし,向拝などに虎と龍を対峙させる建築も多い。ちなみに四霊に虎を加えて五霊とする。-27 -
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