鹿島美術研究 年報第13号別冊(1996)
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瑞巌寺五大堂(宮城県松島町1604)•本門寺五重塔(東京都大田区1608)・ニ荒山神市1680)・西福寺三重塔(埼玉県川口市1693)・輪王寺三重塔(栃木県日光市1713)・祐天寺仁王門(東京都目黒区1735)・総持寺経蔵(石川県門前町1743)•高勝寺三重塔(栃市1780)・日月神社拝殿(秋田県西木村1791)・日光東照宮五重塔(栃木県日光市1818)• 次に,哺乳類では十二支を除くと,鹿・栗鼠.猫・象・狐,魚介類では鯉と蟹の2種類,両生類では亀(玄武を含む)を除くと,「浅草神社社殿」の蛙に万年青がある。五重塔などの場合,方向にあった十二支を入れた幕股を置くことが近世に入って流行する。筆者がこれまでに調査した建築は全国で22箇所で,西日本の調査がまだ完了していないが,東日本に19箇所集中しており注目される。東日本にある十二支を配した年代順建築は下記のとおりである。杜本殿(栃木県日光市1619)・英勝寺仏殿(神奈川県鎌倉市1636)・寛永寺五重塔(東京都台東区1639)・南宮神社高舞殿(岐阜県垂井町1642)・猿田神杜本殿(千葉県銚子木県岩舟町1751)・上根観音堂(栃木県市貝町1772■80)・玉蔵院地蔵堂(埼玉県浦和雷電神社社殿(群馬県板倉町1835)・浅間神社少彦名神社本殿(静岡県静岡市1851)• 最乗寺多宝塔(神奈川県南足柄市1863)がある。その他の文様では,迦陵頻伽・飛天・カ士・雷神が挙げられるが,儒教の影響を受けて二十四孝や竹林七賢人などの中国故事人物を彫ったものや,「雷電神社社殿」のように日本の神話を壁面に大きく扱った例もある。新潟県の佐渡島にある「妙宣寺」本堂脇の渡り廊下に掛けられている彫刻の一群は,江戸後期の文様を知る貴重な資料で,日光東照宮にもみられない文様があり興味深い。江戸時代の寛永頃から冊子や楽器などの器物を描いた芙術工芸品が制作されるが,建第彫刻にはあまりみられない。ただし,佐渡島では「蓮華峰寺霊廟」の花筏・「長谷寺五智堂」の筏・「妙宣寺」の傘・舟を見ることができる。佐渡島には地元の大工による特有の文様の流行があったのかもしれない。最後にいずれにしても,江戸前期には建築彫刻の文様がほぼ出揃い,組み合わせも一定し,それが江戸約三百年を通じて踏襲されたか,江戸後期になって数は少ないが,新しい文様が現れる。ただし,建築彫刻は絵画と違って,その写実性において限界があり,後世の彩色補修などによって当初のものとはまったく違った文様に見える場合すらあ--28 -

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