ョンの上に胴鎧または短キトンを着けており,ペルシア人図像との類似が著しい〔図11, 12〕(注22)。いずれにせよ研究者の間に広く認められているように,戦争後のアマゾン図像が敵国ペルシア人を暗示していることは疑いを容れない。主題の上でもテセウスのアマゾノマキアという新しい画題が成立し,第2段階に見られたスキュタイ衣装を着ける典型的なアマゾン像は数が減り,パルテノン時代前に姿を消している(注23)。結語以上の考察によって,アマゾン族の図像が現実の東方民族のイメージヘと変化し象徴的な意味を強めていくに際して,第2段階(前530から前480年)における図像変化が重要な役割を果たしていたことを,観察し得たのではないかと思う。アマゾン族はこの時代にスキュタイ人の民族衣装を伴って表され始めたが,この新しい図像の成立に際して具体的なイメージソースとなったのは,当時アテナイに居住していたスキュタイ兵士であったと考えられる。芸術家はアマゾンの新しいイメージを作り出し,東方民族としてのよりリアルなアマゾン族の図像を定着させていった。ペルシア戦争以後にアマゾン図像はペルシア人そのものの比喩的表現と見なされるに至ったが,この図像の象徴化という現象は前500年前に図像が現実に著しく接近した準備段階を経てのことであったと言えよう。紙数の関係から本稿においては図像の変遷を記述するにとどめ,歴史と神話が交錯するこうした変遷の意義に関しては,稿を改めて詳しく論じることにしたい(注24)。注本論文において以下の文献略号を用いる。ABV = J. D. Beazley, Attic Black-Figure Vase-Painters (London 1956) ARV= J. D. Beazley, Attic Red-Figure Vase-Painters, 2. ed. (London 1963) Boardman= J. Boardman, Herakles, Theseus and Amazons, in: The Eye of Greece, ed. D. Kurz et B. Sparkes (London et al. 1982) Bothmer=D.v.Bothmer, Amazons in Greek Art (Oxford 1957) Devambes = P. Devambes in: Lexicon Iconographicum Mythologiae Classicae Vol. I, s. v. Amazones (Munchen et Zuerig 1981) Hoelscher= T. Hoelscher, Griechische Historienbilder des 5. und 4. ]ahrhun--457-
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