鹿島美術研究 年報第13号別冊(1996)
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⑰ 十三〜十五世紀における観無量寿経変相図の研究研究者:徳川美術館学芸員山川はじめに観無量寿経変相図(以下,観経変と略称)とは,阿弥陀如来の住する極楽浄土を現世にありながら観相する方法を,章提希という高貴な女性の問に答える形で釈迦如来が説き明かす『仏説観無量寿仏経(以下,『観経』と略称)』の内容を絵画化した作品を指す。仏教的な時代認識では,末法に入る十三世紀から十五世紀には,中国,朝鮮半島,日本において阿弥陀信仰が高まりをみせ,数多くの観経変が生み出された。このたびの研究では,その中から特に,わが国だけでなく東アジアで共有された図像について検討を試みた(注1)。具体的には,「観経十六観変相図(以下,十六観変相図と略称)」並びに,観無量寿経の前半部を絵画化した「序分義図」と呼ばれる幾つかの作例について実見による調査を行った。本調査の対象として,管見では以下の諸作例が挙げられる(注2)。(13) 観経序分義図(大阪,個人蔵)(14) 観経序分義図(愛知,曼荼羅寺蔵)(1) 観経十六観変相図(奈良,阿弥陀寺蔵)(2) 観経十六観変相図(京都,長香寺蔵)(3) 観経十六観変相図(福井,西福寺蔵)(4) 観経十六観変相図(愛知,隣松寺蔵,至治三年四月銘)(注3)(5) 観経十六観変相図(京都,知恩院蔵,至治三年十月,豊工砕囲,李口筆銘)(6) 観経十六観変相図(京都,知恩寺蔵)(7) 阿弥陀浄土図(奈良,法輪寺蔵)(8) 観経序分義図(愛知,大恩寺蔵,皇慶元年二月銘)(9) 観経序分義図(福井,西福寺蔵)(10) 観経序分義図(京都,個人蔵)(11) 観経序分義図(京都,知恩寺蔵)(12) 観経序分義図(大阪,長宝寺蔵)(15) 観経序分義図(奈良,円照寺蔵,四明趙寧華筆銘)-464-暁

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