゜画面の検討に入る前に,まず「観経』の内容を確認しておくべきであろう。『観経』Vヽこのように二組に分けられる傾向は,画中の銘文においても同様であり,阿弥陀寺本と長香寺本,隣松寺本と知恩院本には,それぞれに密接な関係が認められる。ここでは,十三世紀後半の日本における作例(阿弥陀寺・長香寺本)と,1323年の朝鮮半島における作例(知恩院・隣松寺本)それぞれと,西福寺本の図像構成,銘文がどのように関わっているかを確認することにより,西福寺本の位置を定めていきたには慧遠(523■592)以来さまざまな注釈が試みられているが,わが国において最も広く用いられたのは,善導(613■681)の『観無量舟仏経疏(以下『観経四帖疏』と略称)』であろう。ここで取り上げている十六観変相図に関わる観経疏としては,かねてより元照の『観無量寿仏経義疏(以下『観経義疏』と略称)』に依るとの指摘がなされており,筆者もその説に左担するものであるが,ここでは一般になじみ深い『観経四帖疏』の述語によって『観経』の内容をおおまかに辿っていく。『観経四帖疏』では,『観経』の内容を五つに分け,各々をさらに細分化して理解している。以下にその五分科と,該当する経典内容を簡略に示す。l,序分証信序「このように私は聞いた」と『観経』の伝聞を示す発起序化前序釈迦が法を説く前に菩闇嘲山にあったことを示す禁父縁阿閣世太子が父親を幽閉し,餓死させようとする禁母縁阿閣軋太子が密かに父親に食物をもたらしていた母親,章提希を厭苦縁章提希が阿闇世のような悪逆の子を持ったことを嘆き釈迦に訴え欣浄縁草提希が悪人のいない清浄な世界を観じさせてほしいと願い,釈散善顕行縁章提希の願いに応じて,第十四観から第十六観の散善三観に定善示観縁初観から第十三観の定善十三観について略述する幽閉するると,釈迦が仏弟子大目健連,阿難とともに王宮に現れる迦の神通力によってさまざまな仏国土を観じ,その中から阿弥陀の極楽浄土に往生することを願ってその方法を尋ねるついて略述する-467-
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