円形の光をもたらす二つの窓は,教会の二つの目である。正しくは,これらのうち大きいほうが司教と見られ,より小さいほうが参事会長である。というのは,北側は悪魔を表し,南側は聖霊を表す。二つの眼が見るのは,これらの方角である。司教は,教会のなかに招き寄せるために南側を向き,参事会長は,避けるために北側を向く。一方は救われるようにと注意しており,他方は堕落せぬようにと気配りする。これらの両目をもった大聖堂の顔は,天国の燭台と,黄泉の暗闇とに,ぬかりなく警戒しているのである。ここで『聖ヒュー伝』の作者が,薔薇窓について語る内容は以下の三点に要約される。① 二つの薔薇窓を太陽と月に擬え星を普通の窓と比べていること。また二基の燭台,その多彩な色彩に言及し,光と色への強い関心が見られること。② 虹が雲間に反射された太陽光線によってできることを述べた,当時としては極めて斬新な自然学的記述のあること。③ 二つの薔薇窓を人間の目に擬え,それを司教と参事会長とに対比させている。その際特に司教の優位性を強調する。より大きな窓,南の聖霊の方角を見るのは司教であるとし参事会長は北の悪,闇を見てそれを遠ざけると説いていること。上記の三点はいずれもグロステストとの強い関連性を暗示する。とくに②と③が重要である。というのも,太陽光線の屈折・反射により虹を説明した最初の人物は,他ならぬグロステストであった。また,司教職就任にあたり彼は厳しい巡察を行い,聖Ecclesiae duo sunt oculi: recteque videtur Major in his esse praesul, minor esse decanus. Est aquilo zabulus, est Sanctus Spiritus auster; Quos oculi duo respiciunt. Nam respicit austrum Praesul, ut invitet; aquilonem vero decanus, Ut vitet: videt hie ut salvetur, videt ille Ne pereat. Frons ecclesiae candelabra coeli Et tenebras Lethes oculis circumspicit istis. -501-
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