鹿島美術研究 年報第13号別冊(1996)
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@ 濤湘八景図の調査研究研究者:福岡市美術館学芸員池田痔子灌湘八景図は,象徴的な中国の山水画として朝鮮や日本の人々の憧憬の対象になるとともに,刻々とうつりかわる光や大気の魅力を集約した作品として,東洋の普遍的な山水画となっている。今回は,東アジアに広がりをもつ灌湘八景図のデータベースを作成することを第一の目的とし,ついで,日本所在の灌湘八景図(南宋時代,李朝時代初期,南北朝時代と室町時代)を調査し,室町時代の灌湘八景図が,牧鉛や玉澗の作品をどのように受容したかを検討することを第二の目的として,助成をいただいた。以下,データベース作成の現段階での報告と,調査の報告をおこなう。1.データベースの作成データベースの作成は,時代を問わず,中国,朝鮮,日本の灌湘八景図および関連作品を対象としておこなった。ただし,収拾がつかなくなることを避けるために,作品の選択は以下の基準にしたがい,今回は,近江八景図などは取り上げなかった。.灌湘八景のタイトルをもつ作品.灌湘八景のうちの一景あるいは複数景がタイトルとなっている作品,あるいはそれに準じるタイトルの付された作品(例:思堪筆「平沙落雁図」は,『古画備考』八,釈門の項にのる一山一寧賛「洞庭秋月図」とともに灌湘八景図の一部だった可能性が高いため,データベースに含めた。また,大和文華館所蔵の伝安堅筆「煙寺暮鐘図」も「煙寺晩鐘図」の可能性があるので含めた。)•山水図のタイトルでも,八景のモチーフが表現されている作品(例:頴川美術館所蔵の祥啓筆「真山水図」は,八景のうちの四景が描かれており,本来は対幅の灌湘八景図だったものの一方と考えられるため含めた。)・例外として,灌湘臥遊図巻(東京国立博物館)や灌湘奇観図巻(北京故宮博物院)など,滴湘地方の景観を意図して描いた作品は,参考として含めた。現在,作成しているデータベースは144件(うち中国の作品19件,朝鮮の作品13件,日本の作品112件)である。このリストを最後に添付する。-521-

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