鹿島美術研究 年報第13号別冊(1996)
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注化像を生み出したのである。このように意味合いの振幅の広がりを想像させる彼の道化像は,欧米の道化本来のイメージにも親近性を感じさせ,彼が上海と日本国内での見聞の中から,鋭い勘で,道化のある本質を引き出していたことをうかがわせる。このように道化のテーマは様々な画家によって多彩な展開を示し,それは太平洋戦争開始の頃まで続いている。そしてこの流れは,第二次大戦後まもなく描き始められた国吉康雄の数々の傑出した道化像,そして戦後日本の道化像へとつながっていくのである。今後さらにデータを充実させ,この課題の研究を継続したいと思う。(1) 西欧の道化とその表現の歴史については,J.スタロバンスキー(大岡信訳)『道化のような芸術家の肖像』新潮社1975,山口昌男『道化の宇宙』白水社1980, 大島幹雄「道化師群像」(『別冊新評「サーカスの世界」』1981.4),コンスタンティン・フォン・バルレーヴェン(片岡啓治訳)『道化/つまずきの現象学』法政大学出版局1986,田之倉稔『ピエロの誕生』朝日新聞杜1986,その他各種事典類を参照した。(2) 海外サーカス団の来日状況については,阿久根巌『サーカスの歴史』(西田書店るピエロの登場する音楽喜劇が上演されたこと(『音楽雑誌』第29号1983)などが報告されている。介されていた。ては野田宇太郎『日本耽美派の誕生』(河出書房1951)を参照した。(臨川書店1975)などを参照した。1977)を参照した。(3) 明治26年(1893)の軍楽学舎(新宿)の新築記念祭演芸の中で,外国人指導によ(4) 斎藤良輔『おもちゃの話』(朝日新聞杜1971)の中に水上滝太郎の小説として紹(5) 田之倉稔『ピエロの誕生』(朝日新聞社1986) (6) 田之倉稔『ピエロの誕生』(朝日新聞杜1986), またパンの会周辺の事情につい(7)升本匡彦『横浜ゲーテ座(8) 小山内薫については,水品春樹『小山内薫』(時事通信杜1961),『小山内蕉全集』(9) 薦原英了『サーカス研究』新宿書房1984 (10)外山卯三郎編『芸術学研究』第4号第一書房1930 明治・大正の西洋劇場-546-第2版』岩崎博物館1986

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