鹿島美術研究 年報第13号別冊(1996)
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関係を立証するために必要な第1次資料が,またとりわけ今回テーマに選ばれているレオナルドの『マドリッド手稿』に関連する資料が存在していることをまず確かめなければならない。このドキュメントの発掘とそれを新たなボイス像を創出するための文脈に位置づける作業の中からは,大きく二つに分けられる新知見が得られる。のドキュメントには,ボイス自身の美術作品としての資料のほかに,文字資料,研究資料が含まれる。①実際の作品の第1次資料。ボイス自身の手になる素描に関するドキュメント(特に本研究で中心となる,レオナルドの『マドリッド手稿』がきっかけとなって計画されたスケッチブックとその複製)(注3)。②発言や文字の第1次資料。特にこのプロジェクトをおこなうにあたってボイス自身がおこなった発言や文字資料(注4)。③第2次資料。素描を中心とするボイスとレオナルドの関係を扱った文字資料,いわゆる研究論文(注5)。これらのドキュメントが収集され,分析されることによってボイスのプロジェクトの全体像が浮かび上がり,さらにこのプロジェクトの中心となるスケッチブックのマルチプルに含まれる素描の造形的特徴,それが発表された当時の事情,その出版の詳細な形式ならびに周辺のさまざまな事実が明らかになる。その他,ボイスの関心がレオナルドの素描ないし『マドリッド手稿』にのみ限定されるものなのか,それともより幅広いものなのか,またポイスのレオナルドに対する関心はいつごろからはじまっていたのか。本研究が解明すべき主たるテーマからは外れるが,ボイスのレオナルドに対する全般的関心を証明する副次的資料(注6)をも収集した。からすでに位置づけられてきており,この文脈を本研究は基礎としなければならない。1)新資料の発掘。ヨーゼフ・ボイスの素描に関して今回新たに見出された幾つか2)資料の位置づけ。いうまでもなく,これらのドキュメントは従来のボイス研究-582-

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