`--注むすびデュシャンの芸術における「視覚性」の問題は，これまであまり焦点が当てられてこなかった。この事実は，従来のデュシャン研究のなかでレディメイドが主な対象としてとりあげられてきたことと無関係ではないであろう。しかし，デュシャンのレディメイドもまた，視覚的に「照らし」だされたものとはいえないだろうか。なぜなら，レディメイドにおいては，既にウンベルト・エコがデュシャンとポップ・アートとの関連において指摘したように，オブジェは日常のコンテクストから隔離され，その「固有の」特質を奪われている（注15)。そして複製，写真などによって示されるオブジェの視覚的な特性こそが，レディメイドの記号性を特徴づけているものだからである。デュシャンの芸術の視覚性についてのさらなる考察は，デュシャン自身の芸術の全体像を解明するうえで不可欠であろう。またその考察は，現在進行形の現代美術に対するわれわれの理解をさらに深めてくれるに違いない。(1) Joseph Kosuth, "Art After Philosophy I," Studio International, 178, no. 915 (2) Arthur C. Dan to, "The Artworld," The Journal of Philosophy, 61, no.19 (3) Peter Burger, Theory of the Avant-Garde(Minneapolis, 1984), pp.51-52. (4) George Dickie, Aesthetics(New York, 1971), pp.101-108. (5) Frank Stella, quoted in Bruce Glaser, "Questions to Stella and Judd," in (6) PierreCabanne, Dialogues with Marcel Duchamp (New York, 1971), p.77. (7) Alain J ouffroy, Une revolution du regard (Paris, 1964), p.115. (8) Jean Clair, "Marcel Duchamp et la tradition des perspecteurs," Marcel (9) Joseph Masheck, Marcel Duchamp in Per.沖ective,(New Jersey, 1975), (London, Oct. 1969), p.135. (New York, Oct. 15, 1964), pp.580-81. Minimal Art, ed. Gregory Battcock, (New York, 1968), pp.148-64. Duchamp: Ab扇daire(Paris, 1977), pp.124-159. p.23. (10) Octavio Paz, Marcel Duchamp: Appearance Stripped Bare, (New York, 1978), pp.95-6. -613-
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