30センチの高さの,かつては柱頭および台座を成していたのではないかと思わせる部a 1〔図3〕の柱は白い砂岩の2本の角柱を上下につなぎ合わせている。下の角柱にa 10では,ヴォールトと柱頭の間に2枚のレンガを重ねている。を完全に失った遺物となっており,その年代決定は絶対的ではない。しばしばサン・テウセビオ教会クリプト柱頭と比較されるスポレートのサン・タンサーノ教会クリプト他の3教会のクリプトの柱頭は,近年,これまでの柱頭再利用説が否定され,クリプト同様XI世紀の制作であると見直しがなされた(注6)。サン・ジャン・ド・モリエンヌ旧聖堂クリプト内柱頭もまた,J.ユーベールの研究以降XI世紀説が受け入れられているが,多くの研究者を悩ませてきた(注7)。それでは,はたしてサン・テウセビオ教会クリプト内の独立柱の8本の柱頭グループは,再利用部材と判断できるのか。再利用石材か否か確認と,また,柱頭の制作年代についての私見を,以下に簡潔に記す。クリプト内に足を踏み入れると,白い砂岩製の柱頭は,様式的に比較的均様である印象を受ける。その一方で,独立柱の柱身部分に関しては,種々の部材が雑多に集められている煩雑さが目に付く。まず中央の列の4体の柱〔図1,a 5 -a 8〕であるが,この柱身部分は確実に柱頭とは別の再利用部材であり,年代的にも最も古いものと考えられる。中心の上部と下部双方に,それぞれトルスによって仕切られた,20-分があり,カバノは柱頭の下部とこの柱身の上部の正方形の接合部がぴったりと整合していることを指摘した。彼は,XI世紀の職人が柱身として使う部材に合わせようと意図して柱頭を彫り上げたからだと説明している。実際,柱身上部の接合部の大きさは,4部材まちまちであるのに,柱頭はかなり精密に接合している。柱は基本的に角柱であるが,柱身の中央部分の角はなだらかに削られている〔図2= a 4〕。西側の列(a1-a4)では,柱身に使われている部材はそれぞれ異なっている。は東面に縦溝が彫られ,別の建物からの転用であることが伺える。a2〔図4〕の柱は白い砂岩のモノリスの柱身を用いているが,柱頭と比較して細<,a 1のように柱頭と柱身の接合部分は正確に整合していない。a4の柱は,東面の上部半分が平らに削られ,縦溝の装飾が彫られているが,残りの部分は不整形なモノリスの円柱である。東側の2本の柱(a9 -a 10)は,上述の柱と異なり,整った細身のモノリスの円柱からなる。両者に使われている柱身の長さが異なり,a 9〔図5〕では,高さの調整のために,柱身と接する部分の柱頭の平縁を切断してしまったとも考えられ,一方,-634-
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