I万とは言えない。の4本の柱に特に顕著である。中央の列の4本では,柱身として使われている部材の2,図7= a 6〕。それぞれの輪郭は太く縁取りされるが,彫りと仕上げはけっして精す2柱頭は,上下2段に分けられ,三角形と台形の凹みが並ぶ。ロンゴバルド族が移ヴォールトを受ける柱頭の上端部,および,柱身との接合部の不整合は,西側の列上端の傷みが激しく,ひびわれが生じているが,柱頭と整合されるために上端の形に修正を加えた可能性を考えることができる。総括して判断するならば,クリプトの独立柱は,異なる複数の起源を持つ石材が,柱頭に,および柱身に,修正を加えながら再利用されたと判断するのが最も妥当であるように思われる。東側の列の2本の柱の柱頭についても,やはり同様に,再利用石材でないかと考える。サン・テウセビオ教会クリプトの柱頭は,先の尖った細長い葉形モチーフを基本として,逆角錐形を成している。葉形モチーフは柱頭の四隅を囲み,その葉と葉の間,各面の中央部分は,同型の葉のモチーフないし別のモチーフが埋めている〔図6=aa 4〔図8〕とa5の2柱頭に関しては,幾分異なった意匠を見せる。直方体を成動以前から発展させていた貴金属細工との意匠の関連を,ロマニーニ他の学者はこの柱頭浮き彫りについて指摘する。しかしその指摘は,この柱頭に関しては正しくないと考える。サン・トマソ修道院跡出土のいくつかの浮き彫り断片(注8),サン・フェリーチェ教会クリプトの聖櫃の浮き彫り(注9)について,しばしば,貴金属細工や象嵌細工といった工芸品との関連が指摘される。サン・トマソ修道院跡の浮き彫り断片について,元は,凹みを硝子粉ないし釉薬ないし着色スタッコで充壌されていたのではないかというパナッツァによる推定は,説得力を持つ。帯状の隆起線が規則的な幾何学紋様を形作るが,凹みの底面は未仕上げのままであり,粗い彫りのまま残されている。サン・テウセビオ教会クリプトの2柱頭は,隆起帯の作る幾何学紋が,嵌め込み細工のような意匠を一見示すが,凹みの底は隆線と同様の仕上げが施され,空所をなんらかの補完材で充壌したことを示す痕跡はない。2柱頭の紋様は,むしろ,葉形モチーフを基本とした柱頭の変化形のひとつと見倣し得る。a4, a 5の2柱頭は,水平の隆起線により上下2段に分けられているが,上段は,4つの角および4つの面の中央に葉形モチーフが並ぶ柱頭の上半部が彫られ-635-
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