ている。下段は,全角にのみ葉形モチーフが囲む形の柱頭の上半部を,上下を逆に彫られている。a4, a 5の2柱頭は共に,葉形モチーフの柱頭の上半部を上下対称につなげたものと解釈できる。a 9〔図9〕,a 10の柱頭は,通常XI世紀作とされるが,他の8体の柱頭と比較した場合,表現形式に確かにいくつかの違いが認められる。まず,葉形モチーフに明確な縁取りが施されていないこと,そのために輪郭があいまいとなり,表現が弱々しい。また,各角の葉形モチーフの間,各面の中央上部には,円形の斑紋で装飾されていて,直線と曲線の隆起線のみで構成された他の柱頭とは異なった要素を示している。さらに,この2つの柱頭は円柱に載り,柱頭の底部も円形を成す。しかし,同じ葉形モチーフを基調としており,あえてここに4世紀の時間差を読み取る必要性は感じられない。制作年代を推定する上で,比較されるいくつかの柱頭を以下にあげる。スポレートのサン・タンサーノ教会クリプト(注10),サン・グレゴリオ・マッジョーレ~リプト(注11),およびサン・サビーノ教会クリプト(注12)に見つかる,四隅にパルメット葉を配する立方形の柱頭では,ヴォリュートの名残を示す渦巻き紋の刻線が上部に表される。同じ立方体タイプとして,ジャーノのサン・フェリーチェ修道院の5本の小円柱の柱頭及び台座部分(注13),ロデンゴのサン・ステファノ教会由来の2円柱断片の柱頭(注14),またアレッツォ近く,アルペのサン・トリニタ修道院跡にて発見された2本の円柱の柱頭(注15)があげられる。これらの柱頭にはヴォリュートを表す刻線はなく,パルメット紋から発展する幾何学紋のみで構成されている(注16)。また,現在ではVII世紀に年代が据えられている,チヴィターレ・ディ・フリウリの国立博物館蔵のいくつかの小柱頭(注17),一方で,XI世紀のポー河周辺地域の初期ロマネスクの立方形柱頭(注18)との比較も必要とされるであろう。ずしも発展的進化を遂げるわけではなく,アルカイックな表現形式,古い表現言語は,必ずしも制作年代の古さを示さない。サン・テウセビオの柱頭は,上記の作品と比較した時,フォルムの単純さ,仕上げの粗雑さにおいて際だつ。この「拙さ」を,VII世紀という時代にさかのぼらせるか,XI世紀に位置させるか,決定的な結論を導くことは難しい。ただ,ロンゴバルドの貴金属装飾の意匠との関連を否定するならば,VII世紀に遡らせる根拠は希薄になる。再利用される直前の時代,X-XI世紀に位置させるVI世紀からXI冊紀までの間,彫刻全般にわたってそうであるように,柱頭彫刻は必-636-
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