21),東側のアプシス部分に祭壇ないし墓の跡と思われる礎盤と,西側室内には,おそことが妥当なのではないかと考える。プレ・ロマネスクの彫刻史のクロノロジーはいまだ暫定的であり,ロンゴバルド支配期の新しい美術への変化を正確に追うためには,ロマニーニが述べるように,ひとつひとつの作品についての,様々な角度からの,「開かれた」討議こそ有意義であろう。さて,サン・テウセビオ教会クリプトにおいては,柱頭は再利用石材でありながら,ほぼ全支柱に統一して用いており,空間にある程度の規律性が存在する。それは,たとえばサン・ジョヴァンニ・ドムナールム教会クリプト(パヴィア)のホール型クリプトの空間とは大きく異なる。パヴィアのサン・ジョヴァンニ・ドムナールム教会は,IX世紀の記録にはすでに言及があるが,クリプト自体は紀元後千年前後に建造された。内壁はそれ以前の古い建造物を用いているが,正確な復元は難しい。クリプトの空間は4本の支柱により分けられており,東側の2本の柱に,VII1世紀以前の柱頭が再利用されている(注19)。古い床基礎の上に載っている東側の2本の柱は,多種類の石材により成り立っている〔図10〕。柱身部分には,柱頭底部と比較しかなり太めの角柱が,それぞれ長短2本,上下に積み重ねられている。さらに柱礎との接合部分に,かなり摩耗した角材がはめ込まれ,柱礎は,南東の柱では奇ljり型の施された円形のもの,南西の柱では直方形のブロックが用いられている。南西の柱頭は,ラヴェンナ=ビザンチンタイプの古典的なコリントス式柱頭〔図11〕であり,一方,南東の柱頭は,やはりコリントス式柱頭の一発展形態ではあるが,幅広の棘のない葉形モチーフから成り,より模式化・単純化されている。この教会の古い起源を伺わせる部材は各所に見当たるが,しかし長い時代にわたる改修と補修は,正確な再利用の状況を復元することを困難にしている。サン・ジョヴァンニ・ドムナールム教会クリプトの規則性の乏しい空間構成と対照的であるのが,ガッリアノのサン・ヴィチェンツォ教会のクリプト(注20)である。ザン・ヴィチェンツォ教会のクリプトは,前述2教会クリプトと同時期,紀元後千年前後に建造されたが,古い部材は再利用されていない。全柱頭は同じ形であり,柱と柱主が支えるヴォールトとは調和あるリズムが保たれている〔図12〕。パヴィアから40キロ西方に位置するブレーメのサン・ピエトロ教会においては(注-637-
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