c尊(持物独鈷杵):頭光を負い,踏割蓮華上に左足は第一指以外を上げて踏張り,•田中説(注1①)「無量力吼」•国宝指定時「龍王吼」III 無畏十力吼菩薩(金剛杵)N 雷電吼菩薩(千宝羅網)また国宝本現存三幅の,それぞれ火焙に包まれた,画面一杯の念怒の図像を略述すれば,次の如くである。A尊:頭光を負い,蓮華座上に右足を外側に結珈鉄坐する。肉身は所々に濃い群青の粒子が散見され,青色と判じられる。左手は胸前に仰向けて八輻輪を乗せ,右手は第ニ・三指のみ伸ばして胸前に立てる。炎髪を逆立て,正面を向いた額には第三眼を有し,歯と舌も露に大きく開いた口の四隅から四本の上牙を生やす。上半身に条吊と天衣とを纏い,下半身は裳と腰衣で包み,金属製装身具として丈高い宝冠のほか胸飾・環塔・臀釧.腕釧等を著け,また花を連ねた胸飾が目を惹く。B蒻(持物八輻輪):頭光を負い,踏割蓮華上に左足は第一指を上げて踏張り,右足は第一指のみ曲げつつ,身体を開くように外側に膝を蹴り上げる。やや左向きの立像である。肉身は例えば右手の指など各所に,比較的明るい緑青の粒子が残存しており,緑色と判ぜられる。右手は八輻輪を握り締めて高く振り上げ,左手は第ニ・三指のみ伸ばして謄前に立てる。額に第三眼を有し,閉じた口からは前歯と二本の上牙を見せる。裳と腰衣の間に虎皮を巻き,それらを金属性の帯で締める。小振りの宝冠・胸飾・臀釧.腕釧・足釧を著ける。右足は第一指のみ伸ばしつつ胸前上方に膝を蹴り上げ,従って足裏をほとんど正面から見せる。腰を引いて上半身を少し前方に傾けた,やや左向きの立像である。肉身はX線にやや不透過で,黄土による黄色と判ぜられる。右手は独鈷杵を持して高く振り上げ,左手は第ニ・三指のみ伸ばして謄前に立てる。額に第三眼を有し,閉じた口からは前歯と二本の上牙を見せる。裳と腰衣の間に豹皮を巻くが,帯は見られない。小振りの宝冠・胸飾・腎釧.腕釧・足釧を著ける。さて,A尊がI金剛吼菩薩であることについては,従来から異論はない。しかしB・Cの尊像は,現在の尊名に落ち着くまで次のような変遷を辿っている。B尊(持物八輻輪):・背書(注5)「東方十力吼」v 無量力吼菩薩(五千剣輪)-656-
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