鹿島美術研究 年報第13号別冊(1996)
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④ マリオット・ディ・ナルドの《聖母戴冠》祭壇画の再構成(Reconstruction of a Dispersed Altarpiece by Mariotto di Nardo) 招致研究者:マーヴィン・アイゼンバーグ(MarvinEisenberg) 報告者:国立西洋美術館学芸課主任研究官越川倫明期間:1996年2月3日〜1996年2月13E:I 招致研究者の研究状況招致者マーヴィン・アイゼンバーグ氏は,国立西洋美術館を会場に平成8年2月6日から4月7日まで開催された小企画展「マリオット・ディ・ナルドの《聖舟戴冠》」に関連して招致された。同氏はイタリア14世紀末フィレンツェ絵画の専門家であり,とりわけロレンツォ・モナコ(1370? -1422年以後),本展の主題であるマリオット・ディ・ナルド(1394-1424年活動記録)について重要な業績を残している。小企画展の意図は,国立西洋美術館が所蔵するマリオット作「聖ステパノ伝」絵画連作3点を中心とし,これらの作品が本来属していた大型祭壇画に山来するアメリカの美術館所蔵の他の作品を同時に展示し,解体された祭壇画の外観を再構成することであった。アイゼンバーグ氏はこの企画に当初から学術助言者として参加し,招致期間中には,(a)この祭壇画の再構成を主題とする講演(美術史学会東支部例会として東京都美術館で開催),(b)美術史的問題点に関する国立西洋美術館スタッフとの討議,(C)この祭壇画に関する将来の出版計画についての打ち合わせを行った。以下これらの活動の概要を記す。(a)講演会(2月7日於東京都美術館講堂)講演では,イタリア14冊紀絵画における「聖母戴冠」を主題とした主要作品の紹介を前置きとして,小企画展のテーマであるマリオット・ディ・ナルドの《聖母戴冠》祭壇画の再構成の問題について論じられた。この祭壇画は,中央パネル下部に1408年の年記をもつもので,様式的にマリオットの作品として認められている。17世紀においてフィレンツェ郊外のボリゴ・ディ・リフレディにあるサント・ステーファノ・イン・パーネ聖堂に置かれていたことが,史ミシガン大学名誉教授(ProfessorEmeritus, The University of Mi-chigan) -686-

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